2021年 新年のご挨拶 - VECサロン

VEC監査 境野 哲

NTTコミュニケーションズ株式会社

  • NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター/スマートファクトリー推進室/スマートシティ推進室 兼務

2021年 新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

この1年は日本の産業界にとって大きな転換点になるように思います。
日本能率協会『日本企業の経営課題2020』によれば、当面の経営課題として「事業基盤の強化・再編」「財務体質強化」とともに「デジタル技術の活用・戦略的投資」を挙げる経営者が増えています。パンデミックなどの影響で多くの企業が減益となったことも背景にあり、ビジネスモデルや事業形態の変更が必要だとする経営者が4分の3に達しています。しかし、デジタル技術を活用してデジタルトランスフォーメーションに取り組み始めた企業は、まだ全体の3割に過ぎません。その要因として8割超の企業が「人材の不足」を訴えており、日本企業が生き残るにはデジタル技術を事業に活用できる人材の確保・育成が急務となっています。

他方、デジタル化の政策で先行する欧州では、業界横断でデジタルトランスフォーメーションを加速させる新しいデータ基盤「GAIA-X」が今年リリースされます。数兆円を投資して第四次産業革命のためのICTインフラを整備し、機械が生成するIoTデータも含めて製造・物流・交通・医療・エネルギー・都市のデータを欧州全体で安全・公正・オープンに利活用できるようになります。このGAIA-Xプロジェクトには、欧州企業だけでなく米国や中国の大手クラウド事業者やIT企業も参画を表明しており、日本企業もこの新しいルールに対応する必要が出てくるでしょう。

また、気候変動による自然災害の多発や海洋プラスチック汚染などの問題が深刻化する中、国連が提唱するSDGsの達成に向けた取組も企業にとって喫緊の課題となります。2015年のパリ協定を受け、日本政府が温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを国際公約し、東京都がガソリン車の販売を2030年にゼロとする目標を発表するなど、化石燃料の使用を前提にした日本の社会インフラや産業構造、ビジネスモデルが転換を迫られることになります。

私たちは、こうした環境の変化に早く適応するために、長期的な事業戦略を組み立て直し、その実現に向けて、国内外のすぐれた最新の技術や経営手法を謙虚に学んで積極的に取り入れ、ICTを活用して業務の合理化・統廃合を大胆かつスピーディに進め、同業他社や異業種他社とも協力しながら、産官学が一体となって新しい国家モデル・産業モデルを創る必要があります。

VECでは、ユーザー企業とベンダー企業と大学などが協力して、マニュファクチャリングに関わる新しい技術や国際標準、法制度、政策などの動向をリサーチするとともに、IoT、サイバーフィジカルシステム、AIといった技術の活用方法やセキュリティ対策の手法などを学んで検証する研究分科会、セミナー、カンファレンスなどを企画・開催しています。産業社会が直面する未曽有の問題を克服していくためには、このVECのような業種業界を越えた有志による自発的な創意工夫の取り組みが必要であり、今後の更なる活動の展開に期待しているところです。皆様も是非このVECの活動に参加して、人脈を拡げ、知識や経験を蓄え、環境の変化に適応するための技術や事業のアイディアを共に創り、活動領域を広げていってほしいと思います。