2016年 新年のご挨拶 - VECサロン

VEC監査 境野 哲

NTTコミュニケーションズ株式会社

  • NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター/スマートファクトリー推進室/スマートシティ推進室 兼務

2016年 新年のご挨拶

2016年 新年挨拶

いま私たちが暮らしている国際社会・産業社会は大きな転換点に立っています。先進国の多くでは経済成長の時代が終焉をむかえ、失業・貧困・高齢化などの問題が顕在化しています。新興国や発展途上国では経済格差が拡大し、政情不安・紛争・テロが起きています。他方で、人類の経済活動に伴って大気中に排出されたCO2が気候変動をもたらし、海面上昇・豪雨・干ばつ等によって文明社会の存続が脅かされています。気候変動の影響で住みかを失った環境難民の発生が、政情不安やテロの一因になっているとも言われています。

そうした中、昨年12月にパリで開催されたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)において、今世紀後半に世界のCO2排出量を実質ゼロにするという国際ルールが196の国・地域の総意で採択されました。産業革命以降、化石燃料を燃やすことで動力や熱や照明の便益を享受してきた人類が自らの産業活動や消費行動をグローバルに規制する史上初の画期的な出来事です。このような社会情勢の変化によって、産業界も今までと違う対応を迫られることは言うまでもありません。すべての国・地域の人々が安心して暮らせる持続可能な社会の実現をめざして、自分たちに何ができるかを考えなければなりません。
それは、製造・エンジニアリングの業界でも同じです。経済格差の拡大や気候変動をもたらした原因は私たちの産業活動にもあるわけですから、その産業のしくみを今後どのように転換すればよいのか一人ひとりが考え行動することが求められます。具体的には、省資源・省エネルギー・再生可能エネルギー活用・ゼロエミッション・フェアトレード・CSR/CSVなどの取り組みを進めて産業の構造や企業の役割を変えてゆくとともに、災害対策・テロ対策・サイバーセキュリティ対策といった設備の安全性や操業の安定性を高める対策が必要になるでしょう。

そのためには、調達・製造・輸送・工事・保守運用・リサイクルといった事業のプロセスやバリューチェーン全体を、グローバルに国境を超えてセキュアにマネジメントできる体制を整えなければなりません。計装制御システムやエンジニアリングが果たす役割も、今まで以上に重要になってきます。

VECでは、そのような社会の要請に応えるために、電力・ガス・水道・石油・交通などの重要インフラや、工場・プラント・ビルなどの設備、そこで働く人、そして様々な製造物の安全を世界中どこからでも見守ることができる仕組みの実現をめざして、調査研究や実証実験、ビジネスマッチングの活動を進めています。昨年は、生産現場の制御システムをセキュアなプライベートクラウドにつないで見える化する「Industry4.1J」の実証実験をVEC会員企業で共同企画し、その実験成果を12月の展示会「計装展/SCF 2015」で紹介して、国内外の政府や業界の関係者から注目を集めました。また、IoT(Internet of Things)やCPS(Cyber Physical System)の技術を活用して生産現場や製品の状態をリアルタイムに監視・解析し生産プロセスや保守運用業務を効率化・安定化する手法を確立するため、「IoT/CPS研究分科会」を新たに立ち上げ、今年から、調査研究活動や政府関係機関/業界への提言、業際的なアライアンス活動などを推進していきます。

今後、製造業のビジネスは、ICT(情報通信技術)の発達やIoTの進展に伴って「ものづくり」の領域を超え、「ソフトウェアサービス産業」へと進化・拡大していくと言われています。技術革新によってビジネスチャンスが広がる一方で、グローバルIT企業など異業種の企業が競争相手として出現してきますので、事業の機会と脅威、強みと弱みの分析を常に見直し最新のテクノロジーを積極的に活用して「攻めの経営」に徹する企業だけが勝ち残ることでしょう。新しいビジネスチャンスを探し、最新のテクノロジーの可能性を試し、現場への導入を進めて競争力を高めていくために、ぜひ今後もVECの会員ネットワークをご活用いただければ幸いです。持続可能で安全な社会を実現する新しい産業システムを創っていくために、産・官・学の叡知を結集して一緒に取り組んでいきましょう。

これからも、こうしたVECの活動にご支援ご協力くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。