2022年 新年のご挨拶 - VECサロン

VEC監査 境野 哲

NTTコミュニケーションズ株式会社

  • NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター/スマートファクトリー推進室/スマートシティ推進室 兼務

2022年 新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

いま日本の産業界をとりまく環境が急速に変化しています。
世界各国のパワーバランスと需給バランスの変動やパンデミックによる物資の供給不足とインフレ、気候変動に伴う熱波や洪水など気象災害による生産と消費の停滞、プラスチックごみによる海洋資源の毀損など地球規模の構造的問題が深刻化して、国連が提唱するSDGsの達成が緊急課題となり、機関投資家などの株主や顧客や規制当局が、各企業の事業活動における環境負荷の低減とその取り組み状況の情報開示を強く要求しています。

そうした中、欧州では、蓄電池の資源管理に関する新たな法令を2026年から施行し、電気自動車に使われる蓄電池1つ1つにバッテリーパスポート番号を付与し、原材料の組成情報の開示や有害物質の漏えい防止、製造時CO2排出量の削減、2次利用や原料リサイクルの状況報告などを自動車メーカーに義務付け、そのために必要なグローバルサプライチェーン企業間をつなぐ情報管理システムの整備を進める方針です。

そのような企業間のデータ共有を安全に行うための新たなデジタルインフラとして欧州Gaia-Xが今年5月にリリースされます。今後数年にわたって数兆円が投資され、第四次産業革命のためのICTインフラを整備し、機械が生成するIoTデータも含めて製造・物流・交通・医療・エネルギー・都市のデータを欧州全体で安全・公正・オープンに利活用できるようになります。

そのGaia-Xのインフラを活用して、ドイツでは、自動車産業のバリューチェーンを構成する1,000社の受発注情報や製造データをグローバルに共有するデータプラットフォーム「Catena-X」が開発されており、サーキュラーエコノミーやカーボンフットプリントのためのアプリケーションサービスを今年から世界規模で展開する計画です。日本のサプライヤーもこのCatena-Xにネットワークやクラウドを経由して直接間接につながり、欧州の法令や基準に従って欧州の取引先とオンラインでデータを共有することになるでしょう。日本の政府や産業界は、こうした状況に対応するための法制度やシステムの準備を急がなければなりません。

VECでは、会員企業の皆さまがそうした準備にいち早く取りかかれるようにするため「バリューチェーン接続テストWG」を立ち上げ、欧州Gaia-Xの標準仕様の1つ「IDSコネクター」とOPC UAのインターフェイスを用いて、日本の企業と欧州の企業の間でデータを共有する実証実験を開始しました。日本と欧州に産業機械のエミュレーターやIoTゲートウェイを設置して双方向でデータを通信することに成功しています。

そのほかにも、ユーザー企業とベンダー企業と大学などが協力して、マニュファクチャリングに関わる新しい技術や国際標準、法制度、政策などの動向をリサーチするとともに、IoT、サイバーフィジカルシステム、AIといった技術の活用方法やセキュリティ対策の手法などを学んで検証する研究分科会、セミナー、カンファレンスなどを企画・開催しています。産業社会が直面する未曽有の問題を克服していくためには、このVECのような業種業界を越えた有志による自発的な創意工夫の取り組みが必要であり、今後の更なる活動の展開に期待しているところです。皆様も是非このVECの活動に参加して、人脈を拡げ、知識や経験を蓄え、環境の変化に適応するための技術や事業のアイディアを共に創り、活動領域を広げていってほしいと思います。