2020年 新年のご挨拶 - VECサロン

VEC監査 境野 哲

NTTコミュニケーションズ株式会社

  • NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター/スマートファクトリー推進室/スマートシティ推進室 兼務

2020年 新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

皆様は日本の企業を取り巻く現在の事業環境をどのように分析・予測されていますでしょうか。
私は、日本の国家モデル・産業モデルが、いよいよ危機的な局面に差し掛かってきたと感じています。

日本では、政府や企業の責任者も国民も、多くの人が四半世紀以上前の成功体験に囚われて真の問題やリスクから目を背け、世界の政治・経済・産業・文化の潮流変化に合わせて戦略を変え事業内容を取捨選択し未開拓の新領域に挑戦するという環境適応の努力を怠ってきました。

少子高齢化で労働人口が縮小しているのに、行政分野でも産業分野でも情報通信技術を活用した業務の効率化において欧米や中国に大きな後れをとり、データ保護やセキュリティ管理に関する法体系の整備も後手に回り、産業の新陳代謝が進まず、生産性が低迷して多くの労働者の実質賃金が減少しています。

かつてのような経済成長が見込めず税収が伸び悩む一方で、社会保障費や防衛費の支出が膨張して累積債務が積み上がり、国家財政や年金は破綻同然の状態にあります。

さらに、震災や原発事故、気候変動に起因する風水害などが度重なって災害対策費用もかさみ、国・自治体・企業・家計の財政をますます圧迫しています。

新規事業創出やデジタルトランスフォーメーションを担うイノベーターやエンジニアの育成・確保に欠かせない学校教育や職業訓練の刷新も遅々として進まず、政・財・官・学における人材の質の劣化が目立ってきました。

昨年末には、COP25(国連気候変動枠組条約締約国会議)開催中に環境NGOグループが日本に「化石賞」を与えたほか、世界経済フォーラムが発表した女性の社会進出度ランキングで日本が過去最低の121位に後退するなど、環境や人権に関する人類共通の目標を定めた国連「SDGs」への対応でも日本の後進性が顕著になりました。

このままでは、環境と人権を守る事業にのみ投資を行う「ESG投資」の考え方が定着しつつある世界潮流の中で、日本の企業は国際貿易において極めて不利な立場に立たされ、グローバルサプライチェーンから脱落してしまう恐れもあります。

こうした状況の中で、私たちは、国際社会における後れを挽回して生き残りをはかるために、150年前の明治維新期と同じような危機感と使命感と連帯感と覚悟をもって、速やかに行動を起こさなければなりません。

ビジネスを取り巻く世界潮流の変化の兆しを敏感につかみ取り、その変化に適応するための長期的な戦略を組み立て直し、その実現に向けて国内外のすぐれた制度や技術や経営手法を謙虚に学んで積極的に取り入れ、情報通信技術も活用して業務の合理化・統廃合を大胆かつスピーディに進め、同業他社や異業種他社とも協力しながら産官学が一体となって新しい国家モデル・産業モデルを創る必要があります。
目標達成期限が10年後に迫るSDGsへの対応も特に重要な喫緊の課題となるでしょう。

VECでは、ユーザー企業とベンダー企業と大学などが協力して、マニュファクチャリングに関わる新しい技術や国際標準、法制度、政策などの動向をリサーチするとともに、IoT、サイバーフィジカルシステム、AIといった技術の活用方法やセキュリティ対策の手法などを学んで人材育成を推進する研究分科会、セミナー、カンファレンスなどを企画・開催しています。日本の産業社会が直面する課題を克服していくためには、このVECのような業種業界を越えた有志による自発的な創意工夫の取り組みが必要であり、今後の更なる活動の展開に期待しています。

皆様も是非このVECの活動に参加して、人脈を拡げ、知識や経験を蓄え、環境の変化に適応するための技術や事業のアイディアを共に創り、活動領域を広げていってほしいと思います。